テレビドラマにあるような、前兆もなく、激烈とともに頭や胸を押さえて、バタっと倒れるワンシーン。心筋梗塞や脳梗塞といった、血栓によって血管がつまったことで引き起こされる血管性の病気の恐ろしさは、がんとは違い、突然発症し、生命に大きな影響を与える恐れがあることです。
動脈硬化は、血管の老化からはじまり、血管の炎症を促進させる、ストレス、喫煙、暴飲暴食、睡眠不足、運動不足といった悪い生活習慣が原因です。さらに、高脂血症、高血圧、糖尿病などが加われば、動脈硬化の進み具合に加速をつけます。
また、このようなリスク要因は、ひとつだけ重症なものを持っている人より、軽くても複数を併せ持つ人の方が、血管リスクは倍増します。リスク要因をたくさん持っていても、動脈硬化による自覚症状はほとんどありませんから、定期的な検査と、生活習慣の見直しが重要となってきます。
喫煙者はタバコを吸わない人よりも3倍、高血圧の人は高血圧ではないひとよりも3倍も発症しやすいという統計が出ています。
からだのどこかで血管が傷ついたり破れたりして出血が起こると、まず血液中の血小板がその傷口に集まり出血を止めます。そこへフィブリンという物質が凝集して血小板の隙間を埋めて血栓となり完全に止血します。さらに血管壁の細胞が増殖して血管を修復します。
このように優れたメカニズムで傷口は修復されていくのですが、このままでは血流は阻害されてしまうため、今度はプラスミンと言う酵素が働き出し、血液凝固因子フィブリンを溶かしていきます。それにより分解された物質をFDP(フィブリン分解産物)と言い、D-ダイマーはそのうちの1つです。
D-ダイマーが陽性であるということは、フィブリンが存在し、それが分解されていることを意味します。従って、血栓がからだのどこかに存在している可能性が高く、また、測定値の上昇は、形成された血栓の程度を反映します。
LDL(悪玉)コレステロールは、コレステロールを全身の細胞や血管へ運び、HDL(善玉)コレステロールは、全身の余分なコレステロールを肝臓まで運ぶ回収係をしています。喫煙や食事の偏り、運動不足によって善玉コレステロールは低くなり、結果としてコレステロールは全身の細胞で増えてしまいます。血中の脂質は、血管壁に埋め込まれるようにして変化しますので、血管の痛み(硬くなる)、血流が悪くなります。
血管を構成している細胞は、高濃度の糖にさらされることによりダメージを受けます。糖尿病による三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)は、高血糖により細い血管が傷められたことによるものです。このように高血糖の状態が続くと、細い血管は破れたりしやすくなります。
本来の血管はゴムホースのようにしなやかでハリがあり、血液もスムーズに流れます。しかし、血液中に余計な脂質があったり、ストレスがあったりすると、それだけで血管壁を傷害しますが、加えて高い血圧で血管壁が24時間おしつぶされることで、ますます血管が硬くなったり、破れやすくなったりします。高血圧は徐々に心臓への負担も大きくします。
血中のD-ダイマーを調べることで、体のどこかに血液凝固が存在しているかどうかを推定することができます。D-ダイマーの値が高い場合は、血のかたまりや血管のツマリが多数ある可能性となりますので、すでに血栓がどこかで発生している状態であることが強く推察されます。血管内での異常事態の可能性がありますので、精密検査の必要があります。